こんにちは。
今年はマイコプラズマが流行っています。以前は4年ごとにはやるので「オリンピック病」とあだ名がありましたがずっとその異名は影を潜めていました。今年は8年ぶりの流行だとか・・。とはいえ、オリンピックの年とは一致したままなのですね。
マイコプラズマは最初は普通の風邪の症状で始まります。その後、咳が悪化し夜のみ熱が出て以後さらに微熱が続き、とうとう夜中に起きるようになってきます。最初の咳症状のみで正確に診断できるドクターがいれば名医だと思います。咳をする様子が聞ければなんとなく予測はつくこともありますがいきなり抗生剤を出すことは私はしません。可能性の話をし、悪化したときには必ず受診することをお話します。ここまでくると通常の風邪とは全く違く状態になります。診察中でもずっとむせるような咳をし続けています。
インフルエンザのような検査キットもあるのですが、感度が低く当院では取り扱っていません。一番確実な検査は血液検査ですが、通常は2週間の間隔を置いて2回検査をし、その差をみて診断するため結果が出るまでに時間がかかります。採血2回というのも小さな子では大きな負担です。幸い抗生物質がよく効きます。疑いがある場合にはそのタイミングで抗生剤内服開始することで症状が劇的に改善します。以下に簡単な症例を提示します。
症例Aさん:1週間後に修学旅行を控えている中学3年生の女の子。38度以上の発熱があり当院受診。インフル・コロナは陰性。感冒薬処方。朝は熱が下がるも夕方以降に38度程度の熱が出るため再診。発熱3日目であり血液検査をするもあまり問題なし。熱が続くため念のため抗生剤を処方するも熱持続、ややしんどそうな様子であり肝臓の負担が気になり採血実施。肝臓の数値は異常なかったものの咳悪化、聴診中は我慢できるも聴診をやめるとせき込む状態。マイコプラズマの可能性を考え抗生剤を変更したところ、2日後から発熱・咳改善し無事に修学旅行に参加できました。肝臓の数値のために行った血液検査にマイコプラズマの検査を追加依頼したところ陽性の結果が届きました。
症例B君:小学4年生の男の子。休日に発熱し他院受診しコロナと溶連菌の同時感染と診断。抗生剤を処方されるも39度の高熱持続。当院が夏休み中のため他院を再診。血液検査異常なく処方薬継続を指示されるも4日ほど高熱持続し徐々に咳が悪化。当院受診時にはやっと微熱になるも咳がひどすぎて眠れないとのことでした。経過からマイコプラズマの可能性がありもともと定期受診しているアレルギーの検査とともに採血実施。同時に抗生剤を変更したところ、2日後から劇的に咳が改善したそうです。血液検査の結果ではマイコプラズマ陽性。念のため溶連菌の検査も行っていましたが陰性でした。これはまた別の話になりますが、喉の検査で溶連菌が陽性となっても感染しているとは限りません。B君の場合は喉の検査で溶連菌陽性でしたが実はただ喉に居ただけ(保菌)であり感染はしていなかった、ということになります。
最初の風邪症状が本当にただの「風邪」であれば自然に改善してきます。抗生物質も不要です。時に「連日受診してすみません」と言われることがありますが症状の変化があったり改善しない、悪化した、新たな症状が出てきたなどあれば連日でも受診して症状を診せていただけるほうがありがたいです。それだけ子どもの事を真剣に観察しているということでもあるのでとっても素敵で一生懸命なのだと思います。そういう思いのあるママ、パパを応援していきたいです。